資料1(第13回 問題1)


01-green2

平成7年度

勧告等

(1)社会保障体制の再構築(勧告)

~安心して暮らせる21世紀の社会を目指して ~

(平成7年7月4日 総社第92号 社会保障制度審議会会長発 内閣総理大臣あて)

人口構造の変化や低成長経済への移行等社会・経済構造の変化が急速に展開し、進行しようとしている中で、21世紀における揺るぎない社会保障体制のあり方を構想する必要性にかんがみ、社会保障制度審議会は平成3年(1991年)以来約4年間にわたり社会保障の理念、21世紀に向けての社会保障の基本的あり方及び社会保障の各制度の具体的見直し等につき広く審議を行った結果、21世紀の高齢社会にふさわしい社会保障体制への再構築につき勧告することが適当であるとの結論に達したので、社会保障制度審議会設置法第2条第1項の規定により、別紙のとおり勧告する。

(別紙)

社会保障体制の再構築(勧告)

~ 安心して幕らせる21世紀の社会を目指して ~

目 次 序

第1章 社会保障の基本的考え方

 第1節 社会保障の理念と原則

  1 社会保障の理念

  2 社会保障推進の原則

 第2節 社会保障を巡る問題

  1 社会保障と経済

  2 社会保障の財源

  3 家族と男女平等

  4 国と地方公共団体との役割分担

  5 公私の役割分担

第2章 21世紀の社会に向けた改革

 第1節 改革の基本的方向

 第2節 改革の具体策

  1 健やかな生活のために

  2 介護の不安を解消するために

  3 所得の安定のために

  4 子供が健やかに育ち、女性が働きやすい環境づくりのために

  5 障害をもつ人々の社会参加のために

  6 担い手づくりのために

  7 施設の充実のために

  8 安心して住める家、まちづくりのために

  9 国民の理解を得るために

おわりに

勧告書第2章第2節を転載します。

◆ここから試験に関係のある部分です◆

2 介護の不安を解消するために

・国民が抱いている大きな不安の一つは、寝たきりや痴呆など要介護の状態になった場合のことである。これは、高齢者の同居率の低下、女性の就労の増加などから、従来要介護者の介護の大部分を行ってきた家族による介護が困難になってきたためであり、特に重介護については小規模化した家族が長期にわたって行うには無理があるとの認識が深まってきたためでもある。高齢化に伴う要介護者数の増加、要介護状態の長期化、受け皿である基盤整備の立ち遅れは、制度上の制約と相まって、家族による介護放棄などの問題を引き起こしているとさえ報じられるなど、この問題を一層深刻にしている。今後介護保障制度を確立していくことは、国民に健やかで安心できる生活を保障する上で最も緊急かつ重要な施策である。

・介護保障制度の確立のためまず必要なことは、介護サービスを行う人材の確保、介護施設の整備などサービス供給体制を整備することである。国や地方公共団体はそれらの計画的な整備に努めてはいるが、高齢化がピークに達する時の状況を踏まえるとその整備目標は極めて不十分である。今後、介護サービスの向上を図るため、サービス従事者の教育訓練の拡大・強化、職員の配置定数の改善、サービス評価基準の設定なども併せて行われなければならない。また、施設設備の水準を引き上げ、各種施設を将来の我が国にとって必要不可欠な社会資本と位置づけて、重点的に整備することが求められている。

・人材や施設の量的・質的な整備のみならず、各種のサービスが要介護者に総合的に提供されるサービスのネットワークが各地域ごとに整備されなければならない。また、各種サービスの中から要介護者のニーズに最も合ったものを選び、それが確保されるよう調整するケアマネジメントのシステムが全国的に普及されるべきである。また、高齢者などの自立を促進し、介護者の負担を軽減するという観点から、便利で使いやすい福祉用具の研究開発や普及の促進を図らなければならない。今後の介護ニーズの増大に対応する

ためには、これらサービスや福祉用具の供給は、必ずしも公的部門だけではなく、住民参加型の組織やいわゆるシルバー産業など様々な民間部門によっても積極的に行われるべきである。この場合、利用者のサービスヘのアクセスを容易にし、適切なサービスの利用に資するため、相談窓口が一本化され、手続が簡素化されなければならない。

・介護を要する高齢者は特別養護老人ホームなどの社会福祉施設や老人保健施設、老人病院などの保健・医療施設を利用しているが、これらの施設の間で利用者負担金、受けるサービスなどに格差が生じているため、必ずしもその目的に沿った利用ができる体系になっていない。このため、高齢者の介護を行う施設については、整合性の取れた体系にしていかなければならない。

・今後増大する介護サービスのニーズに対し安定的に適切な介護サービスを供給していくためには、基盤整備は一般財源に依存するにしても、制度の運用に要する財源は主として保険料に依存する公的介護保険を基盤にすべきである。公的介護保険とは、要介護状態になったときに、社会保険のシステムを利用して、現物給付又は現金給付あるいはそれらを組み合わせた介護給付の費用を負担する制度である。長寿社会にあっては、すべての人が、期間はともかく相当程度の確率で介護を必要とする状態になる可能性がある一方、そのような状態になった老親をもつことにもなることから、介護サービスの給付は社会保険のシステムになじむと考えられる。

・公的介護保険として保険料を負担すれば、給付を権利として受けることができるようになる。また、負担と給付との対応関係が比較的分かりやすいことから、ニーズの増大に対しサービスの量的拡大や質的向上を図っていくことに、国民の合意が得られやすい。公的介護保険がサービスの質に係る一定の基準を満たす公的及び民間の様々な介護サービスの費用を負担するようになれば、利用者にとってサービスの選択が可能になり、供給者間の競争を強めてサービスの量的拡大と質の向上が期待できる。

・公的介護保険は、民間介護保険と異なり、強制加入によりすべての人の要介護のリスクをカバーすることができ、また要介護者となるリスクの高い人にも、負担を増やすことなく必要に応じて介護の給付をすることができる。また、賦課方式の公的保険であれば、インフレのリスクにも対応でき、かつ、現在既に要介護の状態にある人々にも制度成立と同時に給付することができる。

・公的介護保険が、いわゆる措置費で運営されている社会福祉施設の費用はもちろんのこと、在宅福祉サービスや介護を行っている保健・医療施設の介護費用の部分をも負担するようになれば、各施策の利用者間の不均衡が是正されるばかりか、各サービス間の連携が強められるであろう。その点で特に、在宅介護を支援するよう公的介護保険の給付が計されることが望ましい。

・介護保障を社会保険の仕組みで行うときに特に留意しなければならないのは、過剰利用を防ぐこと、今後給付費用の増大が見込まれる中で保険財政が破綻せず、国民がその保険料負担に耐え得る仕組みにすることである。従来社会福祉制度において支出された介護費用は公費で賄われてきた経緯もあり、公的介護保険への相当な公費負担の導入は可能であり同時に不可欠である。これに関連して、市町村人口に占める高齢者の割合が不均等である上に市町村間に財政力格差があることが、提供される介護サービスの質・量の格差につながらないよう、広域調整や市町村間の連携に力を入れるとともに、財政力格差を緩和するための支援策も具体化されるべきでる。

・どのような社会保険方式とするかは十分に検討しなければならないが、例えば既存の公的年金制度、医療保険制度若しくは老人保健制度を活用する方式、あるいは別の新しい介護保険制度を創設する方式などが考えられる。関連する部分も多いだけに、これを契機に医療保険制度、老人保健制度など医療保障制度全体にわたった見直しを行うべきである。

・公的介護保険制度の被保険者、給付の内容等については慎重に検討され、要介護状態になった人々を国民すべてが支え、国民の多くが抱いている介護への不安を解消して、明るい展望が開けるような制度にすべきである。ニーズの評価やそれに応じて行うべき介護サービスの決定方法などについて全国的に統一された科学的・客観的な基準を作成するとともに、介護サービスの内容を評価し、それに対する報酬を定める新たな体系を整備しなければならない。




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